「よく聞き給え。これが妊娠だ…!! 〜まりこの妊娠悪阻闘病記⑩〜入院後半」
みなさまこんにちは。
フリーアナウンサーの池田麻里子です。
前稿では、妊娠悪阻で入院していたところまでお話させていただきましたので、その続きをお伝えしたいと思います。
妊娠悪阻で入院〜妊娠13週目〜
コロナの後遺症ではありませんが、「味覚がない状態」で入院生活が進んでいきました。しかし味覚があろうとなかろうと、自力で水分と食事を摂取できるようになるまで退院許可がおりません。
どんなに味を感じられずとも、どんなに吐きつわりや匂いつわりが続こうとも、提供していただく食事と水分をある程度摂取しなければなんの進展もなく、いつまでも入院生活が続くことになります。(一泊うん万円もする入院費が日毎積もり積もって、家計的にも大変なことになります)
朝・昼・晩の食事の有無や量(通常の量とハーフサイズが選べます)が選択できるので、私は、しばらくの間、朝食はなしにしてもらい、昼食と夕食はハーフサイズでお願いをしました。
何か食べていないと酸素が脳に回っていないかのように意識が遠のき、息ができない苦しさに見舞われる「食べつわり」も重なって、まともに食事ができず、ハーフサイズでも食べきれません。その上、せっかく食べてもリバースしてしまうことも続きました。
空腹で気持ち悪くなってきたらすぐに冷えた朝バナナをちゅーちゅーと吸い込むことでなんとかやり過ごしていましたが、水分摂取の点滴が1週間も入院すると効いてきたのか、体力と気力が戻り、だんだんとハーフサイズの食事を完食することができるようになりました。
入院後半には女医さんが赤ちゃんの様子をエコーで見せてくれたりしたのですが、そのときには結構意識がはっきりしていたのを記憶しています。
アナウンサー時代の凜々しい面影はどこにもなく
写真を見てもらえばわかると思いますが、もはや、アナウンサーという職業だった面影は微塵もなく、ただの廃人です。
この頃、さらに廃人度を増す事件があります。
赤ちゃんは極めて元気とのことで、それはもう素晴らしいのでよかったのですが、エコーに映る胎盤を見ている時に、女医さんに、
「胎盤はまだ完成しそうにないですか?」
と尋ねたところ、
「いや〜、まだですねぇ〜」
と、バッサリ。
つわりの正体は、ホルモンバランスが変化することで生じたものなのですが、「胎盤が完成すればたいてい収まる」という噂を聞いていたので、私は、胎盤が完成するのを待ちわびていたのです。
胎盤は赤ちゃんへの酸素や栄養を供給するために、非常に大事な器官ですから、その胎盤がつくられるにあたって、かなりのエネルギー消費やホルモンバランスの崩壊が体内で起こっているわけです。そのためつわりの症状が現れているとか。
その胎盤が完成するのが妊娠15〜16週前後だと言われており、完成されればほとんどの人がつわりから開放されるという情報がどこからともなく入ってきていました。
入院は主に12〜13週という時期だったのですが、「胎盤が早く完成しないものか」、「せめてつわりが落ち着いてくれやしないか」と祈る思いだったので、女医さんの「胎盤完成not yet」という回答が再び私の苦しみを増幅させたわけです。
ていうか、妊娠12〜13週でもつわりが終わる人も結構いるらしいのに、こちとら全然終わる気配なし。
点滴に繋がれたままピークが続いている。
いったい、なんなの?
というわけで、とにかく胎盤が完成することで、つわりが楽になるかもしれないことが、唯一その時の希望でした。
閑話休題。入院中の廃人画像を見て思い出したのですが、妊娠が発覚したときからのつわり以外の症状としてひどかったのが「肌荒れ」です。
私の顔に、醜いニキビが
思春期も、さほど酷いニキビで悩まされたことがなかったのですが、どういうわけか顔のあちこちに吹き出物が出てきて、不愉快極まりなかったです。
ホルモンのバランスが崩れたとか、変わったせいで肌荒れがひどくなるというのはよくあることですが、ここまで酷い肌荒れは初めてでした。
話を戻しますが、入院後数日も経つと、だんだんと食事を摂ることができるようになってきました。
1週間ぐらいで、帰りたい気持ちも出てくるくらいまでに、回復してきました。
すると、頭の中では一泊入院が伸びるごとに「パタパタ」と諭吉様が羽ばたいていく音がして、焦る気持ちが出てきます。
朝昼晩とフルの食事を完食するには至りませんが、朝食にはハーフを、昼食と夕食はフルでお願いして、味がわからないなりにも、ほぼ食べられるようになりました。
帰りたいという「念」が沸いてきました。
そして、入院9日目くらいで担当医に尋ねました。
「そろそろ退院してもいいですか?」
「そうですね、水分も食事も摂れてきているので、点滴を明日外してみて、それでも問題なさそうでしたら退院しましょう。」
その言葉を聞き、「よし!明日、点滴が終わる(かもしれない)!」と、私は突然元気になりました。
点滴を外すということは、ずっと入りっぱなしの点滴の針を抜くということで、吐き気留めや、夜の眠気を誘う成分の注入も終了するのが若干不安ではありましたが、ここ2日ほどは吐き戻すこともなくなっていたので、「まぁ、大丈夫かな」と思っていたのです。
しかし、その夜のことです。
吐き気留めの点滴はそれまで1日4時間以上開けて4回まで注入することが可能だったのですが、既に4回の吐き気留めを使い切っていたにもかかわらず、深夜、猛烈な吐き気に襲われ、息も絶え絶えになり、ナースコールで助けを求めました。
「気持ち悪くて・・・ぜぇ、ぜぇ・・・。」
しかし、吐き気留めの点滴はもう使用できないとのこと。何をしてくれたかというと、大きく柔らかな湯たんぽのようなものをお腹の上に置いてくれ、とにかく子宮を中心に身体を温めるという、なんとも原始的な処置をされたのです。
うん、温かい、、、温かいよ、、、ありがとう看護師さん。しかし、この気持ち悪さは全く変わらないのでした。
つわりの症状は、対処療法にしてもやれることが限られすぎているのです。
その後、なんとかその温かい湯たんぽのようなものにしがみつき、眠気が苦しみに勝った明け方に、なんとか一眠りすることができたのでした。
【了】