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【書評】『ポストコロナの「日本改造計画」』竹中平蔵著

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本書の著者は新自由主義的な言動や政商学者な振る舞いから社会的に賛否両論が分かれている竹中平蔵氏である。筆者としては、センセーショナル的な賛否両論から距離を置いて書評をしてみたい。

著者は本書で「コロナ検証委員会」そして後半では、民間の企業家や文化人、政治リーダーを中心に構成した「ポストコロナ構想会議」の設置とそこで議論すべき6つの政策項目を提案している。筆者も3月以降の政府や自治体の対応を検証する必要はあると考えており、特に4月に発令された緊急事態宣言には発令までの経緯・効果で大きな疑問を持っており、全体像の検証は絶対的に必要だと思う。

 

新たな提言、ニューノーマル

しかし、次の「ポストコロナ構想会議」には筆者は疑問を持たざる得ない。竹中氏が提案した6つの政策については、前半は以前から竹中氏が主張してた構造改革と後半は新たな提言として「ニューノーマル」を主張。このニューノーマルとは竹中氏の言葉を借りると「今後、新たに生まれる常態•常識をニューノーマルとする」としている。

竹中氏については小泉政権の閣僚や政策ブーレンとして規制緩和と構造改革を提唱して、郵政民営化を実現したのは記憶に新しく、当時も賛否両論の議論を生んでいる。構造改革の結果として非正規雇用等の格差社会が広がったのは歴史的事実だ。筆者は竹中氏の主張する新自由主義を全面的に否定はしないが、ベーシックインカム等のセーフティネットない社会は、社会的弱者が社会の底辺的存在になり、脱却する事も困難になってしまう。

さらに本書ではデジタル資本主義と言う言葉が出てくる。デジテル資本主義は「デジタル技術を活用して差異を発見・活用・創出し、利潤を獲得することで資本の永続的な蓄積を追求するシステム」と言うと事だ。ポストコロナ後はこのニューノーマルであるデジタル資本主義を中心とした国家体制にすれば、社会全体はバラ色になると竹中氏は主張しており、本書ではいくつかの成功例を列挙している。

デジタル資本主義は薔薇色の未来か

しかし、筆者は疑問を持たざる得ない。社会活動では成功は有れば失敗もあるもの。資本主義でも社会主義でもデジタル資本主義でも社会的成功者にとってはどんな国家体制でも良いと思う。私達が目を向けないといけないの社会的弱者ではないか。私は全ての社会制度全般を平等にせよとは主張しないが、デジタル資本主義に向かう中で、デジタル機器を使う事が地域的•物理的•能力的に不利な社会的弱者となると非デジタル市民に対する一定の配慮等のセーフティネットが必要だと感じる。だが、本書では全くそのような非デジタル市民への配慮はおろか言及すら殆どない。

私自身、非常に危惧しているのは、このような勝利者視点でしか見る事が出来ない竹中氏が、菅政権の政策的ブレーンであり、政府の成長戦略会議の有識者メンバーだと言う事である。格差社会がさらなる社会の分断を招く事態を非常に危惧せざるを得ない。デジタル資本主義的な経済政策を行うなら、最低でもセーフティネットを充実させる事が必須ではないか。私たちは社会的弱者を切り捨てる政策の動きには注視していくべきだ。(了)

川添 友幸

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川添友幸(かわぞえ・ともゆき)  1978年神奈川県生れ。明星大学大学院博士課程前期修了(教育政策) 教育産業に就職し2013年に退職して独立して教育コンサ...

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